神奈川県民主医療機関連合会

インタビュー

宮下 明 医師:深沢中央診療所

平成7年1月雪の舞う中、阪神淡路大震災の医療応援チームの一員として、私は、神戸のある診療所に待機していました。しかし、震災直後でありながら不思議なことに、その診療所には、患者さんが一人も来ないという状況でした。被災者の多くは、ガスが止まりお風呂にも入れない、食べ物も乾いたパン程度しかなく、体を温めることができない環境に置かれていました。体調を崩している人たちは布団の中でただ縮こまることしかできず、家から一歩も出られない状況だったのです。

病院の暖かい診察室で「来る患者さん」を診ることが当たり前だった私にとって、その経験は新鮮な衝撃でした。そして、私自身が外へ出て行くことによって一人でも多くの医療を必要としている患者さんを診ていきたいと考えるようになり、在宅医療の世界に飛び込みました。

患者さんとの信頼関係は一朝一夕で築くことはできません。長い時間をかけて患者さんと向き合うことが重要です。初めはなかなか心を開いてくれない人も、地道にコツコツと接していれば、“ここにずっと居てくれる先生なんだ”ということが少しずつ伝わり、いつしか信頼してくれるようになります。

右も左も分からずに飛び込んだ在宅医療ですが、これまで患者さんと築いた信頼関係のおかげで、今では診療もとてもスムーズになりました。また、この仕事は、目の前の問題から逃げないスタンスで取り組めば、技術的にもどんどん上達していくことを実感できます。私は皮膚科医の経験が無かったので、褥瘡治療など最初はうまくいかないこともありましたが、皮膚疾患がどんどん治っていくことを通じて、自分の診療技術の向上を確認し、診療に自信をもつようになります。また、疾患が治った際に、患者さんやご家族にとても感謝していただいた時の喜びは格別です。

もし、在宅医療をやっていなければ、こうした感覚を味わうことはなかったのだなと思います。何事にもトライして、それがうまくいかずほろ苦い結果になったとしても、そこで諦めずに続けることで味わえる喜びと充実感が、私にとっての一番のやりがいなのかもしれませんね。

竹内 啓哉 医師:協同ふじさきクリニック

私は、外科医としてスタートしましたが、その後内科に転科し、現在は在宅医療を中心に慢性疾患を診ています。在宅医療を求める多くの患者さんを診療することを通して、以前に比べて医療に対する考え方は大きく変わりました。外科医時代は、急性期医療に携わり、手術や処置などをとおして、病気を積極的に治療して、どれだけ患者さんを回復させられるかに力を注いできました。しかし、慢性期の医療、あるいは老化現象を目の前にして、今までの「治療」という考え方では通用しないことに気づきました。そうした方たちをどうサポートしていけるか、生活の質をどれだけ落とさずに現状を維持できるかが大切になってくるのです。“回復させる医療”から “見守る医療”へと、医師としてこれまでのスタイルが180度転換しました。

在宅医療をはじめた当初は、患者さんの死を素直には受け入れることができませんでした。 “患者さんの死”は医師としての敗北、そう考えていたからかもしれません。それが現在では、いかにして“患者さんの死”を迎え入れていくか、を考える医療になりました。例えば、看取り。点滴などは一切しないですし、自然に衰弱していく姿をじっと見守る。ご家族に見守られて幸せに最後を迎える患者さんを見て、医師としての役割を果たすことができたのだなと思えるようになりました。

病院や外来で患者さんを診る場合、血液検査や画像診断などの客観的データの裏付けをもとに、診断や治療を進めていきます。しかし、在宅医療では判断の材料は多くはありません。理学所見や過去のデータ、病歴と医師としての経験くらいです。そのような状況なので、ご家族やヘルパーさん、訪問看護師さんなどのコメディカルからの情報は大変貴重です。そしてこれらコメディカルからの情報をスムーズに受け取るためにも、診療所のスタッフ、特に在宅支援室の看護師がこれらの診療所外のコメディカルと日常的に情報をやり取りしている環境がとても重要なのです。

ふじさきクリニックには、在宅支援室が設置されており、事務員2人と看護師が常時2名配置されており、診療時間中や時間外の患者さん、ご家族からの問い合わせへの応対、ケアマネージャーや訪問看護ステーション、病院など他施設との情報交換などを行っており、とても助かっています。また整形の先生、皮膚科の先生も依頼すれば往診をしてもらえるので、安心して訪問診療に出ることができます。当院のような大規模診療所の強みですね。

在宅医療に興味はあるけど、不安がある・・。そんな先生方にもおすすめできる現場ではないでしょうか。


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